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セイコーエプソン株式会社
抜き型職種(兼子拓矢)
ものづくりの根幹技術である「抜き型」。
セイコーエプソンものづくり塾の選手は2004年から技能五輪全国大会への出場を復活させ、「抜き型職種」は2007年から今年で4回目の出場になる。
出場を重ねることで先輩から後輩へ練習方法や競技ポイントが引き継がれ、初出場した2007年で田中選手が敢闘賞に入賞し、翌年の2008年には銅賞を獲得。また、2009年には牛山選手も銅賞に輝いた。セイコーエプソンものづくり塾としても、着実にその成果を形にしはじめた競技部門だ。
兼子拓矢さんは2008年の入社とともにセイコーエプソンものづくり塾へ配属。
入社2年目である2009年10月に茨城県にて開催された第47回技能五輪全国大会の「抜き型職種」の出場を果たす。先輩である牛山選手が銅賞を獲得した大会だ。
結果としては兼子さんは入賞にいたらなかった。もちろん一度のチャレンジで入賞できる部門ではない。だが、悔しさは残る。先輩である牛山さんが華やかな表彰台に立った姿をどのように眺め、そしてその悔しさから何を得たのか?2009年の全国大会入賞式直後の喧噪の中でメダリストたちに取材をさせてもらった記者であるぼくはそれが聞きたかった。
兼子さんは2009年技能五輪全国大会で何を感じて、何を得たのだろう?
笑顔で迎えてくれたセイコーエプソンものづくり塾の兼子さん/2009年技能五輪全国大会「抜き型部門」の課題と同じ作品
2009年の全国大会から半年ぶりに会う兼子さんはなんだか少し大人になったような顔つきをしていた。そこには、「やるべきことをやっている」競技者特有の雰囲気があった。
記者:お元気そうですね。なんだか、大人になられた感じがします。
兼子:ありがとうございます(笑)。
記者:今日の取材ではずばり去年入賞できなかったことの悔しさと、今はどう感じているのかをお聞きしたいんです。もちろん賞に入ることが全てではないし、そんな甘いものじゃないということは少しは理解しているつもりですが…。
兼子:うーん、そうですね。やっぱり去年出場させていただいて自分の力のなさを痛感しました。
記者:それはどういう点で感じましたか?
兼子さん:抜き型は機械加工とヤスリがけの二本柱に分けることができるんですけど、やっぱり両方とも基礎技術から鍛えなおさなくちゃだめだな、と。
記者:もう自信を失うくらい?
兼子:自信はなくしましたが、でも抜き型部門って30人くらいの出場者の中から半分くらいは失格してしまうんですね。
記者:そんなに!それほど難易度の高い競技ということですね。
兼子さん:はい。それでぼくは29人中16位で。もちろん悔しいけれど、でも失格しなかったということを糧にして、ここから始めることはできると思いました。
0.001mm(1ミクロン)の精度を要求されるヤスリがけの技術はとにかく修練しかない
兼子さんは箕輪進修高校(旧箕輪工業高校)の総合工学科出身。実家が大工だったこともあり、大工へのあこがれもあって高校の進学も決めたが、お兄さんが実家を継がれたそう。それじゃあ自分はどうしようかな、と考えていたときに高校の担任先生に勧められてセイコーエプソンものづくり塾を見学に訪れた。
自主的に訓練している訓練生の真剣な姿を見て、「素直にすごいなと思った」という。職人的なかっこよさも大工にあこがれていた兼子さんには大きかったそうだ。
記者:リスタートを決意して、なにか考え方が変わったりしましたか?
兼子:そうですね、大会を経験するまで僕はとにかくヤスリがけの技術を磨くことに重点を置いていました。機械加工ももちろん練習したけれど、まだまだ意識が足りなかったです。
記者:それは他の選手を見てそう実感したということですか?
兼子:はい。抜き型は機械加工で大枠を作ってから、ヤスリがけを6時間かけて仕上げるんですけど、他の選手は機械加工の正確さや丁寧さがすごいと思いました。
記者:つまり土台段階の精度の違いが後々大きく響くということでしょうか。
兼子:そうです。入賞するくらいの品質を実現するためには、そこから大切にしなくちゃいけないということを去年の技能五輪全国大会で痛感しました。
記者:それは、実際のものづくりの現場でもそのまま通用することなんでしょうね。
栗生:そうなんです。練習では毎日テーマを決めて取り組むんですけど、そうやってボトムも含めたレベルを上げていかないと駄目なんだとわかりました。
記者:うーん、本当にものづくりの現場の人の声ですね。当たり前なのかもしれないけれど。
毎日の訓練を共にする牛山先輩と技能五輪全国大会での入賞を目指す
技能五輪全国大会「抜き型職種」の課題は7月に公表され、大会本番まで約三カ月の訓練期間がある。
しかし、課題は大会当日に30%変更した内容が出される。つまり、どんな課題になったとしても随時対応できるための技術力が必要なのだ。
取材終了後に訓練を見学させてもらうと、兼子さんと去年の銅メダリスト牛山さんはわき目もふらずといった姿で作業に入った。そこにはセイコーエプソンものづくり塾選手共通の「自主性」が色濃く感じられた。
訓練の途中、作っている課題を手に兼子さんは先輩である牛山さんにチェックをしてもらい、いくつかのアドバイスを真剣な顔で聞くとまた作業に没頭していく。
「とにかく今は、一週間に一つ仕上がる完成品に全てを注ぎ込みます」と取材時で話してくれた兼子さんの言葉そのままの姿が目の前にあった。
「2010年の技能五輪全国大会の目標は何ですか?」との問いに、「出場者全員で表彰台に上がることです」と答えてくれた兼子さん。
何も言わないけれど、少しだけうれしそうな目になってうなずく牛山さん。
ここには「ものづくり」というステージで「なりたい自分を目指す」若者たちがいて、彼らはいま自分が少しずつ歩を進めていることを実感しているんだな、と思える取材だった。
手の感覚を研ぎ澄まし、機械を越える高精度に挑む。
「抜き型」製作に関する加工・調整技能の優秀さがポイント。
与えられた金型素材に対しフライス盤等の工作機械で中仕上げ程度の加工をした後、ヤスリや汎用測定器等を用いて最終の仕上げ加工、組立調整作業により打抜き金型を製作します。
選手は主要部品の加工精度をミクロン単位(0.001mm)で調整しなかればならず、短い競技時間の中で、機械工作、ヤスリ仕上げ、組立て調整の精密かつ総合的な技能が問われます。
| 社名 | セイコーエプソン株式会社 |
|---|---|
| 代表 | 碓井 稔 |
| 設立 | 1942年 |
| 事業内容 | 情報関連機器(プリンター、スキャナー等コンピューター周辺機器及びパソコン、液晶プロジェクター等映像機器)、電子デバイス(ディスプレイ、半導体、水晶デバイス)、精密機器(ウオッチ、眼鏡レンズ、FA)、その他の開発・製造・販売・サービス |
| 従業員 | 連結78,376名/単体13,194名(2009年9月30日現在) |
| 資本金 | 532億400万円 |
| 住所 | 〒392-8502 長野県諏訪市大和3-3-5 |
| TEL | 0266-52-3131 |
| FAX | 0266-53-4844 |
| URL | http://www.epson.jp/ |