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「溶接」とは、ざっくばらんに言えば、2つ以上の部品を溶かし合わせ、一体化させる技術のこと。鉄工、自動車産業をはじめ、工業界になくてはならない重要な過程のひとつだ。
今回話を伺った前田鉄工所の高木さんは、2009年、この溶接技術の全日本大会で入賞を果たした実力の持ち主。
掌にのる小さな部品から5トン、10トンの大きな機器まで、今でこそ慣れた手つきで鮮やかに扱う彼だが、そこに至るまでは、やはり多くの迷いや苦労もあったようだ。
溶接は人の手でひとつひとつ行う。機械ではできない技術
高木さんが所属する製造部製造3課は、溶接加工を担当している。
ボイラーやヒーターといった熱源機器の製造販売を行う前田鉄工所では、基幹部品ともいえる熱交換器の製造を受け持つ部署だ。
社内では、ホテルの空調機器・インスタントラーメン工場への熱交換器から、ハイブリッドカーのバッテリー製作のための熱源まで、さまざまな分野で使われるさまざまなものを作っている。だから「溶接技術者にも、いろんな需要に対応できる技術が必要」と、30人の課員をまとめる係長でもある高木さんは、とつとつと話してくれた。
「溶接って、長くやったからってうまくなれるわけじゃないんですよ。繰り返し繰り返し練習していて、ある日いつのまにかできるようになる。それが面白さでもあります」
日ごろの積み重ねが、気づかないうちに身に着いた技術となる楽しさ。
「20代でもすごい技術を持っている人も多いし、やりがいのある仕事だと思います」と言う高木さんは、自身も27歳の2009年、ボイラー溶接士の技術を競う全日本の大会(※)で、実質3位の日本ボイラ協会長賞を受賞した。
次の大会では、上司でもある上條課長が一昨年前に獲得した日本一のボイラー溶接士の称号が目標だ。
※第39回全日本ボイラー溶接士コンクール 被覆アーク溶接中板の部
ものが形になる面白さを感じられる仕事
実を言うと、高校の頃はやりたい仕事が決まっているわけではなかった。
普通科を経て、学校の勧めで入社したものの、溶接という言葉すらなじみがなかった新人時代。3課に配属された時は「やけどもするし、正直イヤだなと思っていたんです」
心境が変化しだすのは、ものがカタチになる面白さを、少しずつ実感できるようになってからだ。
「初めてやった時にはうまく溶接できなかったモノを、一定の波になったキレイなビード(溶接部)でくっつけることができた時はうれしかったですね」
厚い溶接マスクの遮光ガラスを通して、部品と部品を溶かし合わせ、ひとつの部品へとくっつけ合わせていく。作業は、ほんの限られた視野の中で行われなければならない。けれども、その限られたガラスの向こう側で、見るべきポイントが分かればうまくいくのだと、仕事を続けるにしたがって、自分の中で手ごたえを感じるようになっていった。
入社2年目にはボイラー溶接士の資格を取った。
「実技と筆記とがあるんです。試験当日は会場に行くバスの中でまで問題集を解いていました。あれだけ勉強したことは、高校時代にもなかったですよ(笑)」
やがて火傷が肌になじむ頃には、火花の熱さも苦にならなくなったという。
「1本のパイプと1枚の板が、溶接したり、切断したりすることで、最終的にひとつの製品になる。
完成した時の嬉しさは格別です」と話す笑顔は、溶接という仕事に全力を注ぐ今だからこそ見られる表情なのだろう。
高木さんと上司の上條さん
プライベートでは2人の男の子の父親だ。お兄ちゃんは2歳、下の弟は2009年に生まれたばかり。かわいい盛りの子どもたちと公園に行ったり、お風呂に入ったりするのが、今は何よりの楽しみだという。
若い面々が多い製造3課は、互いに仲がいい。休憩時間には、やはり3児の父親である上條課長と、得意料理の話になることもあるといい、休みの日には家事も一手に引き受けているいいパパのようだ。
「先輩後輩ともうまくコミュニケーションが取れるムードメーカーです。技術もかなり身についているし、これからは皆を引っ張れる指導力を養ってほしい」とは、上條課長の言葉。それを半ば照れた様子で聞きながら、高木さんはそれでもしっかりと頷いていた。
| 社名 | 株式会社前田鉄工所 |
|---|---|
| 代表取締役 | 半谷 雅典 |
| 設立 | 1906(明治39)年4月 |
| 事業内容 | 鋳鉄製ボイラ・ヒータを中心とした熱源機器の製造販売 鋼板製ボイラ・ヒータや熱交換器、超音波洗浄機などの製造販売 |
| 従業員 | 194名 |
| 資本金 | 1億円 |
| 住所 | 〒382-8555 長野県須坂市大字豊丘1385-1 |
| TEL | 026-246-7301(代表) |
| FAX | 026-246-7335 |
| URL | http://www.maedatekkou.co.jp/ |