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NPO諏訪圏ものづくり推進機構
諏訪のものづくりを繋いでいく~SUWAMOの取組み
人口20万人の地域に1000社もの中小企業が集まる諏訪地方。諏訪湖のほとりに位置するこの地域は、江戸時代から養蚕業が盛んで、明治以降は製糸工業で繁栄しました。また、製糸機械の修理やメンテナンス、部品供給のための金属加工から一般機械工業も発展し、大戦中は大都市の工場の疎開による技術移転も加わって、ものづくりの土壌が育ちました。戦後は、精密機械工場の一大集積地として、「東洋のスイス」と呼ばれ、日本の製造業をリード。その後の世界的な経済変動に伴い、生産拠点がアジア各国へと移動し、不安定な受注と過激なコスト競争のなかで危機感を抱いて生まれたのが、広域的・横断的に産業活性化支援を行う「諏訪圏工業メッセ」とそれに続く「NPO法人諏訪圏ものづくり推進機構」です。
今回は第10回目となる諏訪圏工業メッセ開催を間近に控える「NPO法人諏訪圏ものづくり推進機構」を訪ねました。
2002年に始まり、今年で記念すべき10回目の開催を迎える「諏訪圏工業メッセ」。今年は、参加企業全てに得意とする技術をシートに記述してもらい、そこから販路を広げて行く。また会場では、地域振興や発展をめざす参加企業の熱い想いや地域への感謝を感じることができる。
かつて岡谷市を中心に発展した諏訪圏の生糸産業は、もともとはフランスやイタリアが盛んだったため、製糸機械も高額な輸入品に頼っていました。しかし、徐々に機械の国産化が進み、品質を高めるための工夫と改良を繰り返す過程で、部品作りやメンテナンスといった一般機械工業も発展していきます。こうして、高価だった輸入機械を国産機械に変えることで、実にコストが16分の1に削減し、良質・安価な生糸を輸出することで日本は世界一の製糸産業大国となりました。ここに、諏訪地方における「あらゆるものを自分たちで作る」という基盤が築かれたのです。
第二次大戦中は、それらの技術が兵器産業へとシフトし、国からの技術者が諏訪圏に集結。さらに工場の疎開先を探していた、セイコー社やオリンパス、沖電線といった都市部の大手企業の高度な技術移転も加わって、戦後は、ヤシカや荻原製作所といった地場の起業も進んだ結果、精密機械工場の一大集積地として「東洋のスイス」と呼ばれ、日本の製造業を象徴する歴史を歩んできました。
ところが今から10年余前の世界的な経済変動によって、諏訪圏の工業生産は落ち込みます。倒産する企業も相次ぐなかで、対策として、危機感を持って開催されたのが2002年の第1回となる「諏訪圏工業メッセ」でした。かつて、諏訪の起業家たちは自分で会社を起こしたという気負いもあり、結束して何か活動することはありませんでした。それぞれ個々の企業のなかで開発や販路を拡大してきたのです。しかし、そういった体質に警鐘を鳴らし、製造者のみならず、地域や行政も一体となって工業を発展させようと、販路開拓のために始まったのが工業メッセです。さらに、多様で高度な技術を有する諏訪圏のポテンシャルを生かし、広域的かつ横断的に産業活性化支援を行う目的のもと、2005年には、地元企業の様々なスキルを持ったOB人材を中心に、工業専門の団体である「NPO法人諏訪圏ものづくり推進機構」が設立されました。
元々は新入社員の育成道場として、人材教育に力を入れていた「諏訪圏ものづくり推進機構」。ある程度の経験を重ねたOBを指導者に迎え、毎年、中小企業において50~60人の人材が育成されてきた。彼らが1年間の研修で大きく成長してきたことで、企業や行政と推進機構の信頼関係が成立している。
諏訪地域6市町村には、切削・プレス・電子・金型など、独自の微細加工技術を持った特徴ある中小企業が集積しています。ものづくり産業を取り巻く環境が激変するなかで、これらの企業群が連携し、独自の技術を発揮し合うことにより、人材育成や企業体質強化・改善、ビジネスサポートなど、一社だけでは解決できない課題に、産・官・学が一体となって取り組むという考えで設立されたのが「諏訪圏ものづくり推進機構」です。設立理念は「中小企業をサポートするなかで、地域の進歩発展に貢献する」こと。そう話すのは、今回お話を聞いた、諏訪圏ものづくり推進機構常務理事の小坂和夫さんです。「あくまで目線は中小企業に向けられ、何をやるにも、まず、中小企業にとって正しいことか、重要なことかをベースに考えている」と小坂さんは言います。地域の中小企業が推進機構を活用することで、さらなるものづくり技術やサービスの発展をめざす、サポート的な役目を果たすのが、この「諏訪圏ものづくり推進機構」なのです。
技術サポートのなかでも最も重要視しているのが、「人材の育成」です。現在、大手企業を中心に生産拠点がアジアへと移動し、今の円高状態が続けば、ほぼ半分の企業は移転するとも言われています。実際に、諏訪圏にも海外進出を考えている企業がいくつもあるのだとか。彼らは、現地生産を考え、部品などを生産している業者も連れ立って海外へと進出し、まるで海外でのレンタル工場のようなシステムを作り始めています。しかし、生産拠点を海外に移したとしても、これまで日本で受け継がれてきたものづくりの技術や技能を持つ人材までは派遣できません。今、世界が最も日本に頼り、助けを求めているのは、この人材の派遣であり、それだけ技能人材の育成は困難であることがわかります。
かつて、職人の世界は「見て覚えろ」という世界でした。それに対し、「このままでは日本の技術は衰退してしまう、たとえ海外に進出しても国内に人材を残し、日本の技能を守らなければならない」という危機意識のもと、OB人材からなる諏訪圏ものづくり推進機構は、切り口を変え、科学的手法に則り、動作解析やポイントを押さえるといった分析から、どこにもなし得なかった育成方法を開発しました。結果的に、通常技能検定2級をとるためには10~15年というスパンが必要なのに対し、1年でそれ相当の力をつけるほど、短期間での人材育成に成功したのです。これらは、エプソンものづくり塾で培われた人材やIHI、オリンパスと言った世界に名だたる企業のOBによる技能の結束とも言え、今では「日本から世界へと発信する基盤になれる自信がある」と小坂さんは話します。
お話を聞いた諏訪圏ものづくり推進機構常務理事の小坂和夫さん。
そんななかで、昨年は、長野県から技能五輪選手育成の依頼の話も届きました。そこで選手育成を目的とした「TEAM SUWAMO(チームスワモ)」を今年の4月に設立。OB人材8人による学科授業と技術指導を行い、来年の長野大会への出場選手を育てています。現時点ですでに、推進機構で開発した独自の科学的分析に基づく育成方法により、来月の静岡大会にも出場できるほどレベルの高い人材が育ってきているのだそうです。それでも「世界で戦うためには、今よりももっとハイレベルでハイスピードな育成が必要。そのためには諏訪圏全域で、人材の育成に取り組まなければいけない」と小坂さんは言います。それゆえに技能五輪への取り組みはいいきっかけになり、未来への地盤作りにもなっているのだそうです。また、OB人材からは、世話になった諏訪地方への恩返しといった気概も感じられるのだとか。さらに優秀な人材を育成することで、企業にとっては事業継続のパワーにもつながり、地域の発展へと結びついて行きます。
諏訪地方の技術発展をリードし、ものづくりや産業、技術、サービス、ネットワークなど、広く活動を行っている諏訪圏ものづくり推進機構。世界に羽ばたく人材育成を中心に、今後、さらなる活躍を見せるであろう同機構に、期待が高まります。
| 社名 | NPO諏訪圏ものづくり推進機構 |
|---|---|
| 理事長 | 草間 三郎 |
| 設立 | 2005年(平成17年) |
| 住所 | 〒392-0023 長野県諏訪市小和田南14-7 |
| TEL | 0266-54-2588 |
| URL | http://www.suwamo.jp/ |