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PERSONA STUDIO
三谷龍二(代表)
木工作家の三谷龍二さんが工房を構えるのは松本市の郊外、アルプス公園の麓。そこで生まれる木の道具は、暮らしのなかにあってなんの不自然さも醸すことなく、その使い勝手の良さに、毎日の道具としておのずとなじんでいく。
それは確かな技術によって裏打ちされたものに違いはない。けれど、そこにあるのは木工の技術だけではない。
誰のために、何のためにその道具は存在するのか。そのものの見方が、多くの人に愛される木の道具を生み出している。
山桜に胡桃、ブラックウォルナット、神代楡にローズウッド。
三谷龍二さんの工房の脇には、さまざまな木材がうずたかく積み上げられている。
木肌の色艶、美しさ、節や傷を見極められたこれらの木材は、彫刻刀やろくろで形を整え、オイルや漆を塗って仕上げられていく。そうしてつくり上げられた木の道具たちは、しっとりとした触れ心地や、そっと手で包みたくなるようなやさしい風合いを持つ。
「木は土や金属と比べても軟らかで、温かい。そうした肌触りが、長い時間かけて自分の体に入ってきている」
暮らしのなかで使う木の道具をつくる木工作家の三谷龍二さんは、木と向い合うときの思いをそう語る。
三谷さんが木工の道を志したのは29歳のとき。10代から修業する人が多いなかで、木工作家としては遅いスタートだった。
19歳から7年間は京都の劇団に所属していた。グラフィックデザインに興味を持っていて、公演のボスターをつくらないかと誘われてのことだった。小さな劇団で、ポスターやチラシ、パンフレットの制作だけではなく、役者や大道具なども経験した。今でも三谷さんは自ら編集作業やポスターの制作、写真撮影を行うこともある。
「すべての経験が今につながっている」と振り返る。
手に職をつけたいと思い始め、大道具などを経験していたこともあって、松本の職業訓練学校に入学、木工を学んだ。そして81年、30歳で工房PERSONA STUDIOを開く。
はじめは家族で暮らす3DKの一間を工房とし、そこで制作に取り組んだが、手狭になって現在の場所へと工房を移すことになる。
上/依頼を受けて制作中のコーヒーカップ。ここから表面を整え、仕上げていく 下/工房の2階にある小さなキッチンにも、三谷さんの木の道具が並ぶ
三谷さんの木の作品は、愛嬌と哀愁とを合わせ持つブローチなどのアクセサリーから始まった。その頃に出会ったのが、農民美術だ。農民美術には長年研鑽した木工職人たちの素晴らしい技術があるのに、生活とは離れていると感じ、同じ技術でも、もっと暮らしに近くて長く使えるものがつくれないかと思い至った。
そして、松本という土地柄で身近だったのが工房スタイルの家具作家たちだった。彼らがつくる木のテーブルの美しさと暮らしの近くにあって長く使えるという家具のあり方は、三谷さんを魅了した。けれど、かけだしの自分が同じことをやっても追いつかない、小さなことでも自分にできるもっと身近なことからコツコツとやっていこうと、まずつくったのが木のスプーンだった。続いてバターケースをつくる。
いずれも日々の暮らしで、必要なもの、必要な形。誰のために、何のためにと、それを使うであろう誰かの生活を思いながら、三谷さんの木の道具は生まれた。
農民美術に感じた疑問が大きな転機になったが、農民美術のあり方を否定するのではない。
「農民美術と自分の木の道具の根底にあるのはまったく同じ木工の技術。けれど、何を目的にするかで、その形が違ってくるだけ。自分が、誰のために何をつくりたいのか、それを見つける目を持つことが大切」と三谷さん。
それから29年の歳月が流れ、今では、パン皿、ボウル、ケメックスの取手、茶筒、カトラリー、片口、お猪口、大鉢、角皿、無垢に加えて漆の器……と、三谷さんは暮らしに近い木の道具をつくり続けている。
上/「君の椅子プロジェクト」に贈られる椅子のデザイン 下/工房は常に美しく、使いやすいように整えられている
三谷さんが暮らしに近い木の道具をつくるのは、木工の世界に入ったのが通常よりも遅かったために、使う側でいることが自然なことだからだ。
漆の器をつくるようになったのも、使い手だからこそ。陶芸で焼き締めもあれば釉薬をかけるものもあるように、木の器も耐水性を考えた時に漆の器があるといいと、日々の暮らしで思ったことから生まれた。
現在、三谷さんは北海道東川町で行われている「君の椅子プロジェクト」に参加している。東川町では子どもが生まれると、その年オリジナルの木の椅子をプレゼントしていて、06年は中村好文さん、07年は伊藤千織さん、08年は前川秀樹さん、09年は小泉誠さんがデザインした。そして10年は三谷さんのデザインによる木の椅子が贈られる。どれも作家の思いが込められた椅子だが、年ごとに評価されてしまう面があることも否めない。
ほかの作家とは違う、三谷龍二という普遍性をつくっていかなければならない場面に直面することは、かなりのプレッシャーだ。
けれど、そのときに三谷さんを支えるのは、「すべての形には必然性があって、きちんとした暮らしをしていれば、おのずとその形は見えてくる」という考え方。プレッシャーや日々の努力はあっても、自分の暮らしをベースにしたものづくりは、楽しく生きることであり、その生活に不満はない。
「これからの三谷龍二」についてうかがうと、「普通にやっていけたらかっこいいよね」と少年のように笑った。
「必然性」「普通」。
聞いていればさらりと言うが、丁寧な暮らしを営み、固定概念をはずして当然のことを見つけ、それを形にし続けることは、きっと、セオリーのある木工という技術を身につけるよりも、そして口で言うよりもはるかに難しい技術なのだろう。だからこそ、三谷龍二という人がいる。
長年、コツコツと積み重ねた木工の技術と暮らし。そして、あくまで暮らしに寄り添った木の道具をつくりたいという思い。その3つがともに存在することで、三谷さんが考える木の道具は、普通に、必然的に、生まれ続けていくのだろう。
※君の椅子プロジェクト http://www.kiminoisu.com/
| 社名 | PERSONA STUDIO(ペルソナスタジオ) |
|---|---|
| 代表 | 三谷龍二 |
| 設立 | 1981年 |
| 事業内容 | 木工業 |
| 従業員 | 1名 |
| 住所 | 〒390-0861 長野県松本市蟻ヶ崎2459 |
| TEL | 0263-36-3330 |
| FAX | 0263-36-8974 |
| URL | http://www.mitaniryuji.com/ |